たたかうアーティスト
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みどころ
戦後日本のアートシーンを駆け抜けたアーティスト、故郷・佐賀初の回顧展
戦後、社会の問題を鋭く風刺する、ペン画による「ルポルタージュ絵画」で脚光を浴びて以来、70年余りの長きにわたり芸術家として第一線で活躍し、戦後日本のアートシーンを駆け抜けた池田龍雄。全国的に極めて重要な芸術家であるにも関わらず、これまで故郷・佐賀での大規模な回願展は行われておらず、本展が初の機会となります。
《怒りの海》1953(昭28)年
東京国立近代美術館蔵
《腕》1953(昭28)年
板橋区立美術館蔵
アーティストとして一「あそび」と「たたかい」
池田は、アーティストとして生きることは「たたかい(闘い)」であり、同時にアートは「あそび」であると語っています。人の心と精神の自由を形にする「あそび」としてのアートを、厳しい生活や表現方法との苦闘、すなわち「たたかい」の中で生み出す。この池田のことばは、彼の生き方と作品の特徴をよく伝えています。
本展では、池田の多彩な作品世界を紹介することで、池田龍雄という芸術家の姿を詳らかにします。
これまであまり取り上げられてこなかった「絵本の原画」も紹介
『ないたあかおに』をはじめ、池田龍雄は多数の絵本等の挿絵も手がけています。
絵本挿絵の仕事は「芸術家・池田龍雄」の仕事としてはメインになるものではない
ため、過去の展覧会ではあまり紹介されてきませんでしたが、これらの作品はいわゆる芸術作品とは違った、温かな魅力を感じさせるものです。
本展では、残された絵本原画等を展示し、彼の絵本挿絵の仕事についても紹介します。
『ないたあかおに』表紙
(偕成社刊)1965(昭40)年
展示内容
プロローグ 池田龍雄・「あそび」と「たたかい」の道
《漂着》2001(平13)年 個人蔵
《『ないたあかおに』原画》
1965(昭40)年 個人蔵
撮影:上野則宏
画像提供:佐谷画廊アーカイブ
1章 わたしは芸術家になる 一池田龍雄の「戦い」と「闘い」一
1945-1953 自画像、初期の洋画、「ルポルタージュ絵画」等
軍隊と師範学校、二度も「お上」に翻弄され、生き方を制限された池田は「自由」を求め、「芸術」の世界にその可能性を見出します。上京、多摩美術学校への入学、前衛芸術との出会い、多種多様な芸術家との交流を通じて、自らの表現を模索していく中、東西冷戦の緊張や基地問題で揺れる社会を目の当たりにし、ルポルタージュ絵画を打ち出していきます。
《自画像》1947(昭22)年 個人蔵
《網元》1953(昭28)年
東京都現代美術館蔵
2章 「レアリテ」を求めて一「ペン画」の展開一
1954-1969「百仮面」、「化物の系譜」、「玩具世界」シリーズ 他
ルポルタージュ絵画の制作を機に、池田の武器は油絵具からペンへと変わります。また、1955年頃から、作品の主題が時事的問題の記録・告発から、社会や人間の本質・内面的な問題へと広がっていきます。「百仮面」「化物の系譜」等のシリーズは、現代社会に巣食う「見えないもの」を描き出す試みでした。1960年代以降は、色彩豊かなシリーズ「玩具世界」や、パフォーマンス要素を含むコンセプチュアルな作品にも着手していきます。
《巨人》1956(昭31)年 東京国立近代美術館蔵
《賑やかな人々》1956(昭31)年 練馬区立美術館蔵
3章 哲学と造形の彼方へ一「楕円空間」シリーズ、「梵天の塔」、そして「BRAHMAN」ー
1970-1990「梵天の塔」とコンセプチュアルな作品、「楕円空間」、「BRAHMAN」シリーズ
1960年代頃から、作品の主題は宇宙や生命の根源といったものに更なる変化を遂げています。「楕円空間」シリーズは、花田清輝のエッセイ『楕円幻想』に着想したもので、善と悪のように対立しつつ離れ難い二つの焦点をもって生きる人間の性質を楕円に重ねています。また、表現技法の面でも、ペンからアクリル絵具との併用、立体、更にコンセプチュアルアートへの移行が生じます。数理ゲームを元にしたという《梵天の塔》を開始、続く「BRAHMAN」シリーズは、池田が最大かつ最長の期間をかけて手掛けた全10章からなるシリーズであり、本展でも最大の展示数を誇るシリーズとなっています。
《楕円空間 No.11》1964(昭39)年 個人蔵
《BRAHMAN 第6章 気跡》1982-83(昭57-58)年
山梨県立美術館蔵
4章 マルチアーティスト=池田龍雄!一つくるためにいきる・いきるためにつくるー
絵本原画、表紙絵、挿絵、その他美術以外の資料
前衛の世界に生き、世間的な権威に従うことをよしとしなかった池田は、しばしば経済的な問題に直面し、生活上の必要に迫られて「仕事」を請け負うことになります。初期には、「きぬこすり」と称される、写真を元にした写実的なポートレイトを米兵向けに描いた時期もありました。最も大きなウェイトを占めたのは、小説や雑誌のカット、特に絵本の挿絵の仕事でした。『ないたあかおに』(1965年初版、偕成社)はベストセラー作品となり、今なお、子どもから大人まで多くの人々に親しまれています。作品ごとにタッチを使い分け、活き活きと描かれた挿絵を見ると、池田の技量の高さ、何より丁寧な仕事ぶりに驚かされます。
《ポートレート「きぬこすり」》1952(昭27)年 個人蔵
《絵本『幼年民話 おばけばなし』原画》 伊万里市民図書館蔵
5章「モノ」と人間・世界とのあいだー「箱の中へ」・オブジェをつくる一
「箱の中へ」シリーズ、立体、オブジェ作品、晩年の作品
子供時代の池田が、よく作っていたという箱庭。自然物や廃品を転用し、木箱の中にひとつの世界をつくり出す再生と創造の行為は、ボックスオブジェのシリーズ「箱の中へ…」に関連付けられます。池田は、「箱」という閉ざされた世界をつくることで、「現空間のささやかなほころび」≒「窓」を開き、その向こう側に、一度捨てられたものたちに再演の舞台を与えようとしたのでした。この手法は、池田の晩年のシリーズともリンクし、「万有引力」や「場の位相」の作品の多数には、虫食い穴のような「穴」が穿たれています。
《友に捧ぐ》1991(平3)年 佐賀県立美術館蔵
《場の位相 No.3》2003(平15)年 個人蔵